経済学院論Ch20。 期待形成と合理的な期待仮説
Chapter 20. 期待形成と合理的期待仮説
経済主体が未来をどのように予測するかによって、経済政策の成否が分かれる。本章では、現代マクロ経済学のパラダイムを変えた合理的期待(Rational Expectations)仮説と、それによる政策の限界を分析する。
1. 期待形成の二つの方式
(1) 適応的期待 (Adaptive Expectations)
- 過去のデータと経験のみに基づいて未来を予測する方式。
- 特徴: 予測誤差が持続的に発生し、修正するのに時間がかかる。
(2) 合理的期待 (Rational Expectations)
- 利用可能なすべての情報(政府の政策発表を含む)を使用して予測する方式。
- 特徴: 体系的な誤差(Systematic Error)が発生しない。人々が政府の政策意図を把握し、事前に対応する。
2. ルーカス批判 (Lucas Critique)
ロバート・ルーカス(R. Lucas)は、過去の統計的関係が政府の政策変更後も維持されると考えるのは大きな誤りであると批判した。
- 理由: 政府が政策を変えると経済主体たちもそれに合わせて行動ルールを変えるからである。
- 結果: 過去のデータに基づいた大規模なマクロ経済計量モデルの予測力が低下する原因となった。
3. 政策無効性命題 (PIP: Policy Ineffectiveness Proposition)
合理的期待をする経済の下では、予見された政策は実体経済に何の影響も与えないという命題である。
- 原理: 政府が通貨量を増やして景気浮揚を試みても、人々がこれを事前に予見し、価格と賃金を即座に引き上げれば実質生産量は変化せず物価のみが上昇することになる。
- 示唆: 経済を刺激するには、ひたすら「予想外の(Surprise)」政策のみが短期的な効果を持つということである。
4. リカードの等価定理 (Ricardian Equivalence)
政府支出の財源を租税で賄おうが国債発行で賄おうが、経済の実質変数には違いがないという理論である。
- 合理的な消費者は 政府が今日債券を発行すれば、後で税金を引き上げることを予見し、消費を増やす代わりに 貯蓄をする。したがって、総需要増大効果が相殺される。
5. 結論: 政府と国民の知恵比べ
合理的期待仮説は、政府が国民をだます方式の政策はもはや通用しないことを示している。したがって、現代の中央銀行は「サプライズ」よりも市場との信頼(Credibility)とコミュニケーションをより重視する方向に方向転換するようになった。
📖 参考文献
- [マクロ経済学] - チョン・ビョン烈(Jeong Byeong-ryeol): 合理的期待とPIPの精密分析。
- [Econometric Policy Evaluation: A Critique] - ロバート・ルーカス: 現代マクロ経済学の礎石。
お疲れ様でした。次回は、実質的な景気変動の原因を技術ショックに求める景気変動理論と経済成長モデルについて学習します。
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Oiyo
編集部OIYO編集部は、経済・法律・生活・自己理解のテーマを一次資料と公開統計で検証してまとめます。すべての記事は出典を明記し、定期的に見直して正確さと実用性を保ちます。